コラム

量子コンピューターの時代が到来!?

こんにちは。三寒四温を地で行く今日この頃の天候ですね。

今週末から来週に掛けてはソメイヨシノの開花が見られるかもしれないので、気分も幾分か明るくなってまいります。
私は、花見の酒を何にしようか?と検討するのに多忙な日々です(笑)

 

先日、『MITテクノロジーレビュー』という雑誌主催の「量子コンピューター」のセミナーに参加してまいりました。

講師は東京工業大学理学院教授の西森秀稔先生です。

2月3日のブログでも少し触れましたが、今後の人工知能は量子コンピューターの出現で飛躍的に発展すると日頃思っていたところ、もう数年前にカナダの企業によって発売されているということを知り、「これはえらいことになっている!」と馳せ参じたわけです。

と言いましても、私は高校時代に数学はある程度得意だったのですが、物理で挫折して文系が決まったほどの物理音痴なので、理解できるか非常に不安でしたが、数式をほとんど使わずに分かりやすい言葉で説明していただいたのと、事前に先生の著作を読んで予習して行ったので、どうにかこうにか理解できた気にはなりました。

 

ところで、最近会社か自宅のパソコンを新しいものに替えた方っていらっしゃいますか?

私も昨秋に自宅のパソコンを買い替えたのですが、パソコンを替えても期待したほどパフォーマンス(特に速度)が上がっていないと思ったことはないでしょうか?

インテルの創業者の一人のゴードン・ムーアさんが1965年に集積回路の実装密度は18ヶ月で2倍になるというムーアの法則を提唱されたのですが、半導体の素子の微細化に限界が到来し始めているのが、その原因の一つのようです。

それに加えて、2013年のタイム誌によればIT機器が消費する電力はもうすでに世界の発電量の10%に相当しているようで、これは日本とドイツの総発電量の合計に匹敵し、エネルギーベースでは全世界の航空機の消費量の1.5倍に当たるそうです。

ということで、現状のコンピューターの性能及び環境負荷に限界が来ており、他のモデルのコンピューターはないか?いうことで、量子コンピューターへの期待が高まるわけなのです。

 

ah_column_20170317_01そもそも量子コンピューターって何?ということですよね。

“0”と“1”というビットで処理することは従来のものと一緒なのですが、量子力学の特徴を生かして、0と1の両方を重ね合わせた「量子ビット」を使って計算できる装置のことを指します。

また現在量子コンピューターには「量子ゲート方式」と「量子アニーリング方式」の2種類が存在して、前者は汎用性が高く実際に開発されると、とんでもないインパクトを世の中に与える影響があるのですが、一方でノイズに弱く、例えば機器の周辺で歩いただけで誤作動してしまうという弱点があり開発に困難をきたしているのに対して、後者は限定された目的にしか使用できない理科の実験装置のようなものの、実際にカナダのD-Waveが開発に成功して、2015年に2000量子ビットのモデルを販売しており、NASA、ロッキードマーチン社、グーグルなどが既に導入しているそうです。

 

D-Wave社のモデル「D-Wave2X」は、縦横高さが3m×3m×3mの大きさで、中はほとんど空洞、箱の中央部に超伝導の条件の絶対零度(-273.15℃)近辺の温度を現出できる巨大な真空管のような冷却装置があって、その中に1cm×1cmのチップが入っており、そこですべての計算が行われます。

1台15億円也!因みに、場合によっては従来のコンピューターの1億倍の高速で計算できるそうです(3年2ヶ月かかる計算が1秒で終了する)。

それに加えて消費電力はスーパーコンピューター京の500分の1です。

 

では、どういう時にこの「D-Wave2X」が活用できるかというと、一番分かりやすい例では、宅配便のドライバーがどのようなルートで荷物を届ければ最短距離になるかと?いう問題(最適化問題)などです。

5ヶ所であれば、5!=5×4×3×2×1=120通りで、この程度であれば通常のパソコンで処理できます。

これが15ヶ所になると、1兆3,000億通りでスーパーコンピューター京であれば、0.00013秒なのですが、25ヶ所になると計算時間が49年、30ヶ所になると8.4億年となり、ほぼ計算不能(ある種のアリゴリズムで近似値は出せるのかもしれませんが)になってしまうのです。

それを「D-Wave2X」はどのように解決するかいうことなのですが、そもそも「量子アニーリング」の「アニーリング」とは、日本語で言うと「焼きなまし」という意味で金属を高温にしてからゆっくり冷やしていくと構造が安定することを指します。

つまりエネルギーの負荷を過度に掛けた状態から徐々に弱めるイメージです。

そこで、先ほどの宅配問題になりますが、例えば5ヶ所を回るとして、その地点がA,B,C,D,Eとします。
縦の列を場所にして、横の行を訪問地として仮にB→C→A→E→D→Bの順で訪問すると、

A B C D E
1番目 0 1 0 0 0
2番目 0 0 1 0 0
3番目 1 0 0 0 0
4番目 0 0 0 0 1
5番目 0 0 0 1 0
戻る 0 1 0 0 0

 

と表現され、この表現で合計の距離が一番短い場合を当てるというゲームになります。

もちろん、Bに近いのがCだとすると2行目ではCが選ばれやすいように相互作用を決めるのですが、実際には5つの場所を回るルート全体を考えているので、実際に最適化でCが選ばれるとは限りません。

この相互作用を各点間で定めます。

「量子アニーリング方式」では、最初にすべてのビットが0と1が重なっている状態からスタート(量子力学では横磁場が掛かっている状態)して、このとき0と1の間でゆらいでいる状態で、まだ量子ビット間の相互作用もオフになっています。

その後時間の経過とともに横磁場を弱くしていき、同時に量子ビット間の相互作用を強くしてきます。

そうなると、場所同士の経路の特徴などが反映されて、最短経路の探索が始まり最後に横磁場をゼロにする時に示されたルートが最短経路(最適化)という話です。

 

ah_column_20170317_02あくまでも私のイメージですが、0か1しかない従来のコンピューターですと極端な話、宅配場所30ヶ所の場合、2.7×1032のケースを再現しなくてはならないのを、最初に0と1両方表現できるようにして、徐々に絞り込みを掛けていき、一番エネルギーの負荷がかからない状態を模索するとそれが最適化の解答になるということでしょうか?

汎用性のある「量子ゲート方式」のコンピューターが実用化されると創薬や排ガス処理、太陽電池の開発などに威力を発揮するそうですが、暗号の解読にも一役買うことは間違いないです。

現状2000ビットの暗号を解読するには109量子ビットが必要なのですが、現状開発されているのは10ビット程度で、しかもノイズに弱いと来ているため、しばらくはブロック・チェーンを破られるような事態にはならないようです。

特許ベースでみると、国家ではアメリカと中国の研究が最も進んでいます。

企業ではあのグーグルが、「量子ゲート」「量子アニーリング」の両方式で開発を進めており、ビッグデータと量子コンピューターが結合した場合に果たして何が起こるのか興味深いですね。

本日の内容は『量子コンピュータが人工知能を加速する』(西森秀稔、大関真之著/日経BP社)に載っておりますので、興味のある方は一読されてみてはいかがでしょうか?

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    岡田 英行

    メインのキャリアは大手日系・外資系投資銀行における10年に及ぶ円金利商品の金融法人向けセールス。その他、リテールセールス、キャピタルマーケット、不動産証券化、ヘッジファンドなど金融における幅広い実務経験を有する。ご本人にとっての転職の是非を含め最善の道をご提示します。いただいた求人案件も、本当に良い案件なのか吟味してから良い点、そうでない点を整理してご紹介しております。

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