コラム

それでも不正会計は続く・・財布のひもを締めましょう。

こんにちは。今週は台風が直撃するようですが、その後待望の梅雨明けになるかもしれませんね。梅雨時は発汗作用が鈍り食べてない割に体重が落ちないという悪循環に陥っていたので、早めの梅雨明けを祈る今日この頃です。

ところで、ここのところ大手電機メーカーの不適切会計が連日報道されていますね。日を追うごとに規模が膨らんで来て、いよいよ現社長の責任問題にも発展してきております。
当初は、原子力発電などのインフラ分野の「工事完成基準」の会計処理のみと見られていたところが、捜査対象が全事業部門に拡散したことにより、まだしばらくは決着を見ないようです。上場企業は特に外人株主のプレッシャーがかなりきついため、とにかく利益を上げろとの指令がトップから出るのは想像に難くないですが、大概、粉飾決算は些細なお化粧に始まり、そのうち恒常化して多少の業績のアップでは辻褄が合わなくなり後は嘘の上塗りがいつまで続けられるかという時間との闘いになってしまいます。
私も以前所属していた会社で、同様なことが起きて、廃業になったり民事再生になったりして、多くの社員が翻弄されてきたのを目の当たりにしてきました。今回の事件は氷山の一角とは言いませんが、冷や冷やしなから事態の収拾をみつめている他社の関係者がいるのは想像に難くないと思います。

IMG_150715_s.jpg 何でこの話をしたかというと、たまたま最近「帳簿の世界史」(ジェイコブ・ソール著、村井章子訳)を読んで、人類は同じようなことを繰り返しているのだなと痛感した矢先のこの事件だったからです。この本は、会計(不正会計?)の歴史を勉強できるので興味のある方は是非読まれてみてはいかがでしょうか?
既に古代世界から会計は実行されていて、古くはあのハンムラビ法典に会計原則や商取引の監査の規則が定められていました。古代ローマでもアウグストゥスが帳簿を記入して公開していたのですが、どちらかというと建造物の建築や、軍隊の維持、兵士の褒美をポケットマネーで支払っていたという気前よさを誇示したかったためだったのです。何とも微笑ましい自慢話です。因みに監査の”audit”の語源は支配者や領主が自分の会計書類を見るのではなく、「聴いた」ことに由来するそうです。
会計が高度に発達するのは常にビジネス上の必要性からで、中世では12世紀の北イタリア(フィレンツェ、ジェノヴァ、ヴェネツィア)の商業都市国家で顕著でした。
というのも、このころ遠距離貿易が発達していたこともあり、金銭の回収まで期間が長く尚且つ金額が大きかったために仲間で資金を出し合って貿易を行う共同出資方式を採用せざるをえず、各人の持ち分や利益を正確に計算する必要があったことに起因しました。また、このころアラビア数字がヨーロッパにおいてもなじみがでてきて、ローマ数字のX,C,Iなどで長々と表記しなくても数字を簡潔に表記できるようになったのも大きかったようです。

時代はかなり跳びますが、産業革命でイギリスに蒸気機関車が登場して19世紀に鉄道ブームが起こった際に、アメリカでは1869年までにニューヨーク市場で鉄道会社38社が上場していたそうです。用地・線路・石炭・駅舎などの膨大な資産の把握、それに伴う減価償却の計算がポイントになったのですが、投資家は鉄道会社の経営や収益構造を正しく理解していなかったため、粉飾決算が横行しました。巨額の資本を調達していた鉄道会社が破たんして、投資家が巻き添えになると、資本主義も政府・国家も機能不全に陥ってしまうこともあり、巨大企業を監査する会計士が登場しました。株式会社発祥の地であるイギリスで1840年代までに早くもデロイト、プライスウォーターハウス、アーンスト&ヤング、トウシュなどの大手会計事務所が出現。江戸時代からあるのですね!特にPWHなどは、いち早くアメリカに進出してJPモルガンが手掛けたM&Aの産物である大会社の監査を引き受けて頭角を現してアメリカ会計業界でトップに君臨しました。
しかし、大企業は決算書類の公表をしぶとく拒み続けて、鉄道会社もウェスティングハウスのような大企業も年次報告書を公表しないばかりか、株主総会すら開催しませんでした。これが、1929年のアメリカの大恐慌の原因のひとつになり、1933年の証券法(証券の発行体にすべての重要事項の開示を義務付ける)に至ったわけです。
ところが、今度は監査する側の一角であるアーサー・アンダーセンが会計業界にアメリカ流の文化を持ち込み、誠実に行動する限り会計士はコンサルタントとして活動すべきと考え、監査で知りえた財務情報を活用して巨額なコンサルティング契約を結び、いつしかコンサルティング部門の利益が監査部門と追い抜き、エンロンの破たんに結びついたわけです。その反省でSOX法ができて、会計規則が厳格化されCDO(サブプライムローンの証券化商品)について会計事務所側が資産価値の低い商品だと指摘していたにもかかわらず、今度は投資銀行側が暴走してリーマンショックが起きて現在に至るわけです。

こうしてみると、幾ら会計が発展してもいつの間にか欲の張り合いで怪しい闇の中に突っ込んでしまうことの連続で、この連鎖は今後も続くのでしょう。下手をすれば国家をつぶしかねないような規模の銀行を始めとした大企業の取引というのは規制すべきなのでしょうね。どんな不正会計もいつか必ず清算の日が来ることにより帳尻があっているという意味では合理的なのかもしれません。
少し時代は逆戻りしますが、「太陽の沈まぬ国」と言われたスペイン帝国の全盛期であったカール5世の退位時の1556年に、既に帝国が3600万ダカットの負債を抱えていたというのは少し衝撃でした。(因みにオランダの16世紀の1ダカット金貨がヤフオクにて178,000円で落札されていましたが、この当時のダカットの正確な価値は分かりません。)これは、ポトシ銀山や貿易立国のベルギー・オランダからの収入よりも植民地維持に金が掛かりすぎていたことによるものだそうです。

この事実を基に、ここ10年以上怠っていた自分の小遣い帳を復活させたのと、もう一度家計の複式簿記を付けなくてならないと自らをただすことにいたしました。
帝国に比べてスケールが小さくて申し訳ございません。皆様も今一度身近なところでの資金の出入りを管理されてみてはいかがでしょうか?
自己管理とお金の管理は大事だということを学ぶ良い機会となりました。

 

担当コンサルタント

  • 金融業界

    銀行

    証券

    不動産アセットマネジメント

    クレジット・信販・リース

    PEファンド・ヘッジファンド等

    フィンテック

    金融 その他

    専門分野:証券

    岡田 英行

    メインのキャリアは大手日系・外資系投資銀行における10年に及ぶ円金利商品の金融法人向けセールス。その他、リテールセールス、キャピタルマーケット、不動産証券化、ヘッジファンドなど金融における幅広い実務経験を有する。ご本人にとっての転職の是非を含め最善の道をご提示します。いただいた求人案件も、本当に良い案件なのか吟味してから良い点、そうでない点を整理してご紹介しております。

    メインのキャリアは大手日系・外資系投資銀行における10年に及ぶ円金利商品の金融法人向けセールス。その他、リテールセールス、キャピタルマーケット、不動産証券化、ヘッジファンドなど金融における幅広い実務経験を有する。ご本人にとっての転職の是非を含め最善の道をご提示します。いただいた求人案件も、本当に良い案件なのか吟味してから良い点、そうでない点を整理してご紹介しております。

転職支援サービスへの登録、利用はすべて無料

キャリア相談もお気軽にご相談ください。

無料転職支援を申し込む
業界に精通したプロが、あなたの転職をご支援します。お気軽にご相談ください。無料転職支援を申し込む 業界に精通したプロが、あなたの転職をご支援します。無料転職支援を申し込む