組織とリーダー

　最近少し売れている（失礼な言い方で恐縮です！）「最高の戦略教科書　孫子」 （守屋　淳著）を読みながら、兵法の教えを思い出しておりました。

　孫子の著者と言われている孫武が、呉王闔閭（こうりょ）に「兵法に 基づいて兵を訓練してみよ」と命を受けて、試しに王の寵姫2名を隊長と する宮中の美女180名で練兵することとなりました。
ところが、 そのような者たちは訓練になど慣れていないこともあり、孫武の命に 従わないため、王の寵姫2名をマサカリで切り捨てた途端に、一糸乱れぬ動き をしだしたという有名なエピソードから始まります。

　やはり人間は命が掛かると真剣度が異なってきますよね。
さすがに 民間の会社で命が懸る仕事というのは少ないのではないでしょうか？
よってこの世の中で最も進んでいる組織形態として軍隊がその一つとして 挙げられるのは当然かとも思います。

アメリカで、マッカーサー、 アイゼンハワー、パットンなどを輩出しているウエスト・ポイント （陸軍士官学校）などもその一つかと思います。
その組織の中で、恐怖により 人は自己の最良の面と最悪の面と向き合うことになるようです。

　金融業界では、証券会社などがたまに自衛隊で訓練をするケースもある （あった）ようですが、
かくいう私も愛知県の会社に所属していた時に 悪名高き「富士山の地獄の特訓（管理者養成学校）」に2泊3日で参加した ことがあります。
実際に富士山に行くのではなく、会社の研修所で行われ ました。

　まず怖そうな講師がいきなり入ってきて「机の配列が乱れている。」と 怒鳴りだして細部にこだわることを強調しだし、過呼吸にしてテンションを 高め眠れなくても大丈夫な体に仕立て（平均睡眠2時間位だったか と思います）、プレッシャーを掛けながら羅列のおかしな文章を覚えさせ たり、ワークショップをやったりしつつ、最終的には自分のありのままの 姿を見つめるように追い込んでいく手法でした。
ある意味ウエスト・ ポイントなどのやり方を多少取り入れている節がありました。

　因みに、私はその講師の方が我々を徹底的に追い込んでいる割に職業人と して振る舞う態度が気に入らなかったのでやや反抗的な態度がばれ、最後まで 立たされていました。要はリーダーとして認められなかったのでしょう。
相手が孫武であったら恐らく殺されていたでしょうね（笑）ただ、 そのとてつもなく恐ろしい体験で、自分には謙虚さが足りないということと、 情熱という財産を持っていることを教えてくれたその方には今でも感謝しております。

　そのような究極な状況に追い込まれると、集団の中で本当のリーダーが 誰なのかということが浮かび出てくるというのも不思議なものです。 リーダー像として色々な定義があると思いますが、究極の状況でも他人の ことを慮る方というのは一つの要件ではないでしょうか？
ただ、 そのような方はむしろカリスマに近いかもしれませんね。

　私も金融業界で色々な方を見て参りました。外資系証券の同僚の場合は 資産を築いてリタイアする方がいらっしゃいますが、そのような中 自分でネット証券を立ち上げて、グローバルに業務を展開して雇用を創出 しているMさんは素晴らしい方だと個人的に尊敬しております。

　立食パーティーなどでお見かけしても、一国一城の主であるにもかかわらず 偉ぶらずに,フットワーク良く色々な方に自らご挨拶している姿を拝見 すると本当に頭が下がります。
リストラをして自分（上司）だけが 生き残る金融業界においてもこのようなリーダーが増えると良いですね。